ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2016.10.13 04:10

旧姓使用の続き

昨日の学校での旧姓使用が認められなかった

東京地裁の判決について、朝日・毎日が社説で論じている。

 

●朝日新聞

判決は、姓の変更によって、旧姓を通じて築いてきた信用や評価、

「自分らしさ」の感覚が失われてしまうことへの懸念や、

結婚・離婚のプライバシーが公になるのを嫌がる声に

真摯に向きあおうとしていない。

・・・中略・・・人権のとりでの名が泣いている。

 

↑↑↑これはまさに「働く女性」の感覚だ。

最後の文章は、いかにも朝日っぽいので入れてみましたが。

 

ちなみに「天声人語」では、あまちゃんのヒロインだった

「のん」さんを紹介していた。彼女は事務所との契約の都合で

本名の「能年玲奈」が使えない。それを引き合いに出して、

名前が自分と切り離されていることへのつらさを書いている。

「天声人語」すごい。

 

●毎日新聞

地裁判決は、戸籍姓の合理性と旧姓使用の利益をてんびんにかけ、

前者を優位にとらえた。だが、旧姓使用が着実に浸透しつつある

社会の現状に照らせば、旧姓を使いたいという個人の選択を認める

弾力的な司法判断こそ求められる。

 

↑↑↑

全くです。なぜ現状と逆行するような判決が出たのか、理解に苦しむ。

 

今回の東京地裁の「通称(旧姓)使用は不可」の判決について、

裁判長はこう述べている。

 

「旧姓の使用は広がっているが、社会に根付いているとまでは

認められない」

 

だからダメだというわけだ。

 

しかし201512月、最高裁では民法の夫婦同姓規定を

合憲とした判決を出し、こう付け加えている。

 

「女性側が不利益を受ける場合が多いと推認できるが、

通称使用の広がりで緩和されている」

 

え?

 

通称使用は根付いているの?根付いていないの?

どっちなんだよーーー!

今回の東京地裁の判決は、最高裁が出した付言と

明らかに矛盾している。

なんだか都合のいいように世の中を切り取ってみせるのね。

 

というか、これからは女性活躍の時代じゃないの?

仕事のキャリアとは全く関係のない「結婚」によって、

そのキャリアが分断される不利益を被るのだから、

東京地裁の判決は女性の活躍を妨げようとしているとしか思えない。

 

「同姓=合憲」とした最高裁では、選択的夫婦別姓について

「合理性がないわけではない」として、国会で議論するよう促した。

しかし自民党は家族の一体感が薄れるとして、

以前から夫婦別姓に反対し、昨年の野党の法案も廃案にしている。

最高裁の丸投げ状態は、政府の意向を忖度したのではないかと

穿った見方をしてしまう。

 

それにしても、家族の一体感?

いったい何の話だろう???

私は今でも福本姓になじみがない。

保険証が福本だから、歯医者に行くときなんか、

「福本と呼ばれたら返事するんだぞ」と自分に

言い聞かせている。それくらいなじみがない。

でも、そのことと家族への愛情とは全く別物だ。

姓になじみはなくても、一体感は少しも損なわれない。

 

一方、私のやさぐれ友人たちは、結婚して相手の姓に

変わったけれど、ほとんど離婚している。

人数よりも、バツの合計数のほうが多いくらいだ。

同姓になったことで一体感が生まれるというなら、

こんな現象が起こるはずもない。

 

少なくとも、同姓であることは一体感を持つための

絶対条件ではないってことだけは言える。

もちろん好きな相手の姓に変わって嬉しいと思う

女性もいるだろう。

それはそれで幸せなことだと思う。

だから、選択的にすればいいというだけの話なのに。

  

最高裁での判決が出たとき、自民党内でも女性の意見が割れた。

野田聖子氏は以前から選択的夫婦別姓に積極的。

稲田朋美氏は「同姓=合憲」の最高裁判決を「合理的な判決」と評価。

 
ちなみに野党時代の安倍さんは夫婦別姓を明確に否定していたという。
別姓になったら家族が解体する!
別姓は左翼的で共産主義のドグマだ!

イデオロギーに関係のない社会の現状さえも左翼のせいにするとは、
それこそ時代遅れの男性絶対優位の異常なドグマに
絡めとられていると思うのだけど。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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